「もし○○だったら」
競馬好きなら幾度もこのように思ったことがあるだろう。
もし逃げなかったら。もし出遅れなかったら。もし直線で内に突っ込まなかったなら。もし怪我をしなかったなら。などなど。
現実は変わらないのだし、「もし」を考えるのは生産性のない行為という人もいる。特に、負けたときなど、考えてもしょうがないと。
ただ、競馬はいくつもの「もし」で物語が彩られてきた。多くの人が夢を見、未来を想像し、過去を振り返り、いくつもの「もし」が生まれ、積み重なってきた。
その積み重ねが次の競馬界への原動力にもなり、競馬の魅力へとつながっていく。
今日は東京ダービー。宇宙一の祭典だ。このレースも、いくつもの「もし」で彩られてきた。
「もしマルゼンアデイアルが怪我をしなかったなら」
「もしナイキジャガーが怪我をしなかったなら」
「もし的場文男がシナノデービスではなくジヨージレツクスを選択していたなら」
「もし的場文男がパーティメーカーではなくラッキープリンスを選択していたなら」
「もしブルーファミリーが大外枠でなく、スタートで外に滑らなければ」
いくつもの「もし」。
そして、ずっと続く「なぜ」。なぜ的場文男騎手は東京ダービーを勝てないのか。
さらに加わる「もし」。もし、ランリョウオーが怪我をしなかったなら。
羽田盃の直線、確かに東京ダービーのゴールが見えた。的場文男騎手が東京ダービーを先頭で駆け抜ける未来が見えた。
しかし、現実は過酷だった。ランリョウオーの骨折。
それでも、的場文男騎手は今年も東京ダービーに挑む。39回目の挑戦。相棒をトーセンマッシモに代えて。
トーセンマッシモ。
父キングカメハメハ母ホエールキャプチャの芦毛馬。生産は千代田牧場。
トーセンマッシモの牝系は日本の三大牝系のひとつであるビユーチフルドリーマー。そこからオーハヤブサが出て、オーハヤブサは千代田牧場の基幹牝馬となる。そこからチヨダマサコ、そして、ホエールキャプチャへとつながる。日本の競馬界の歴史がそのまま詰まっている。
思えば千代田牧場は、ナイキジャガーなどナイキを冠名としている馬主が懇意としていた牧場だ。たくさんの想いがこの血統には詰まっている。
正直、力量的には厳しい。
でも、的場文男騎手に合いそうというイメージはある。
外から好位に。あとは、がむしゃらに追うだけ。
これまで積み重なってきた「もし」が、たくさんの想いが、後押ししてくれるはずだ。
第67回東京ダービー
◎トーセンマッシモ 的場文男
その他の馬についても少し。
前日ギガキング一番人気というのはよくわかる。
クラウンカップでは一番強いレースをしたし、東京湾カップでは圧勝だった。
道営実績を考えれば羽田盃馬トランセンデンスと互角以上の評価はできる。
その隣にトランセンデンス。どちらがマークする形になるのか。
ともあれ、この2頭が中心となろう。
逃げるであろうアランバローズ。羽田盃はよく粘った。
距離不安はあるが、スピードは脅威。
距離不安を考慮して中間緩めるか、それとも肉を切らせてのハイラップを刻むか。
新興勢力、未知の魅力ならトーセンクロード。何より無敗。
前が有利な馬場だった羽田盃でよく追い込んできたセイカメテオポリス。御神本騎手が続投なら色気があるということか。あとは馬体が絞れれば。
ジョエルは椿賞、クラウンカップともに展開の利はあった。
それでも連勝の事実。地力アップの証拠であろう。
前が早くなるなら再度出番も。
その他、チサット、マカベウス、ブライトフラッグなど楽しみな馬がたくさん。
これが、宇宙一の祭典・東京ダービーだ。
この夢舞台に立った陣営への賛美を。これから始まる物語への祈りを。
願わくば、的場文男騎手の悲願が達成されることを。