宮本輝の小説に、ダービーまでの人間模様を描いた名作「優駿」というのがある。主人公が手掛けた馬の名を「オラシオン」という。オラシオンとは、スペイン語で「祈り」という意味の言葉である。
そう、ダービーは「祈り」なのである。
すべてのホースマンが、手掛けた馬がダービーの舞台に立ってくれるように祈る。そして、ダービーを勝ってくれと祈る。
いくつもの祈りが折り重なり、特別な雰囲気を生む。
祈りがあるからこそ、ダービーは特別なレースとなる。
だから、ダービーの予想も、祈りなのである。
無敗の皐月賞馬サートゥルナーリア。自分は今まで抗ってきた。
それなのにダービーという舞台でサートゥルナーリアを本命にするのは、自分の信念に反する。
サートゥルナーリアを倒す馬を探す。それも一つの祈り。
悩んで悩んで、結論はダノンキングリーにした。
現在の超高速馬場な府中。先週のオークスで分かるように、クラシックディスタンスではディープ×Storm Catのしなやかな瞬発力がよく合う。
府中コースは2戦2勝。
枠がサートゥルナーリアの隣なら、目標にしてレースがしやすい。
兄や体形から距離不安も囁かれているが、今の高速馬場なら持つ。
あとは瞬発力で抜け出すのみ。
ヴェロックスにも打倒サートゥルナーリアの期待がかかる。
中間ビシバシ追われながら馬体重が減っていないのは好調の証。
枠はやや外目も、包まれずに自分のレースができると考えれば好都合。ハーツクライ系の長く加速する脚が持ち味で、ロングスパート合戦に持ち込めば勝機は見える。
サートゥルナーリア。
皐月賞でややテンションが上がっていたこと。今回乗り替わりでスタンド前でのスタート。この一族の気性を考えると、不安もある。
加えて一見好枠と思いながら、ここ10年一度も馬券圏内に絡んだことのない3枠6番という枠。好位置を取りたい馬が多くいるダービーでは、外から来られて下がってしまうことも考えられる。
それでも、皐月賞で上位三頭の力は抜けていた。サートゥルナーリアを三番手評価より下げることはきつい。
他に穴っぽいところを。
リオンリオンがいて、最内枠にロジャーバローズ。少なくともスローにはならない。今の高速馬場を考えると、ある程度流れたうえでの高速決着になることが考えられる。
そうなると、Kingmambo持ちの出番。そのなかでもいいのがクラージュゲリエ。皐月賞は本調子でなくても5着。調教からも、前走より状態はいい。素質は三強にも引けを取らないものがある。どこまで差を詰められるか。
同じく父キングカメハメハのレッドジェニアルも面白そう。中間の馬体写真でも仕上げてきたなあと思えるほどの状態のよさ。京都新聞杯勝利の勢いに乗って。
枠は外だけど、これまたキングカメハメハ産駒のランフォザローゼスも血統、青葉賞の走りから魅力。
好枠引いたサトノルークス。血統的には府中で距離延長は歓迎で、高速決着にも対応できる。
シュヴァルツリーゼは関係者が皐月賞より前に「完成するのは先だけどダービーは勝ちたい」と言っていたくらいの素質馬。枠が大外なのが難点。
◎ダノンキングリー
○ヴェロックス
▲サートゥルナーリア
△クラージュゲリエ
☆ランフォザローゼス
☆サトノルークス
(☆シュヴァルツリーゼ)
こんなところです。
夢の舞台。素晴らしいレースになることを祈って。